2021年に読んだ本まとめ

Keisuke Okumura | 奥村圭祐
16 min readJan 1, 2022

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毎年恒例、ジャンルは関係ない。まとめるのはけっこう大変である。

PrettysleepyによるPixabayからの画像

最近気づいたことだが「読みかけの夢中になっている本」がない時期に荒んでいることが多い。つまり、読書体験は精神安定剤のような一面をもつらしい。

さて、2021年は何の本を読んだのやら。過去編は以下より。

1. メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち

著: Theodora Goss、購入

タイトルに惹かれて読んだ。登場人物たちがストーリーを振り返るシーンが随所で入るメタ的な構成が面白い。三部作の一作目だそうで、続編の邦訳が楽しみ。

2. 知能の原理 ―身体性に基づく構成論的アプローチ

著: Rolf Pfeifer、購入

昔、自己身体認知の研究に取組んでいたこともあって、こういう本はとても好み。ひっさびさに出会った良いモチベ本。メジャーな立場ではないが、いわゆる「人工知能の研究」といえばこの本で扱っているような内容が最初に思い浮かぶ。絶版と化していますが、同著者による『知の創成』も読んでみたいですね。

3. ディープ・シンキング ―知のトップランナー25人が語るAIと人類の未来―

著: John Brockman、大学図書館より

ノーバート・ウィーナー著『人間機械論』に寄せてのエッセー集。こういうの普段手に取らないんだけど、寄稿者のリストがとても豪華(セス・ロイド、ダニエル・C・デネ ット、ロドニー・ブルックスなど)だったのでつい図書館から借りてしまった。荒唐無稽な主張もあれば一見すべき価値のあるものもあり。皆さんチューリングテスト大好きですね。

4. ロボットはもっと賢くなれるか 哲学・身体性・システム論から学ぶ柔軟なロボット知能の設計

著: 小林 祐一、大学図書館より

多様なバックグランドをよくまとまているなという印象。ただ『知能の原理』がとてもパワフルだったのであまり記憶に残っていない。読む順番間違えた気が。

5. 人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない

著: Jr. Brooks Frederick Phillips、親から

有名本ですね。もう少し経験を積んだらイタイほど味わえる本なんだろうな… さすがに古いのでぽかーんとなった箇所も多いけど、全体的にそうだよなぁって雰囲気で読んでました。

システムデバッグは、天文学と同じように、たいてい主として夜中に行われてきた

6. ボーン・クロックス

著: David Mitchell、大学図書館より

今年ナンバー1。600p超え2段組みのとてつもないボリュームをもつSF(一冊にするな笑)。余韻がすごい、伏線がすごい、濃密さがすごい。良すぎて人生における楽しみを一つ喪失した感が否めない。世界幻想文学大賞受賞作(2020)でずっと気になっていたもの。本当にいいお値段するので躊躇していたら何故か大学図書館にあった。

最後泣いた。

7. Mind in Motion:身体動作と空間が思考をつくる

著: Barbara Tversky、大学図書館より

良いマインドハック本。こういう研究してた世界線もあったかもなーと思いながら読んでた。プロローグのお気持ち表明が素直に当てはまる本なので身構えて読む必要はない。ジェスチャーの実験系の議論が面白かった。

8. 西の魔女が死んだ

著: 梨木 香歩、区立図書館より

梨木さんの著作だと「村田エフェンディ滞土録」というジリジリ読ませてくれる本が好きなのだけど、そういえば代表作は読んだことないなと思い借りた。優しい物語ですね。

9. ねじれた家

著: Agatha Christie、区立図書館より

今年はミステリをよく読んだ。クリスティの本はあまり読んでこなかったんですが、図書館に並んでいたので良い機会でした。

著者の本は犯人当てゲームと同義ですね。負け越していますが。

10. 贖罪

著: 湊 かなえ、区立図書館より

実は著者の作品読んだことなかったので手にとった。読後の気持ち悪さは定評通りですね。こういう作品好きですよ。

11. メソポタミヤの殺人

著: Agatha Christie、区立図書館より

クリスティの代表作。ポアロが頼もしい。犯人わからん。

12. 告白

著: 湊 かなえ、区立図書館より

代表作で納得のクオリティ。救いがないとわかっているのにページをめくる手が止まらない作品。

13. ざっくりわかるトポロジー — 内側も外側もない「クラインの壺」ってどんな壺?

著: 今野 紀雄、購入

LaValleの『Planning Algorithms』でトポロジーの議論が入ってくるんですが、ちゃんと触れたことがなかったので導入にと思い読みました。イメージは掴めた気がします。が、もっと勉強しなければと思ったので、最近は松本著「多様体の基礎」を読んでます。

14. UNIXという考え方―その設計思想と哲学 単行本

著: Mike Gancarz、購入

言わずもがなの名著ですね。名言が多すぎるので噛み締めて生きていきましょう。

紙には気を付けることだ。それはデータの死亡書といっていい。

UNIXシステムは、初心者にピストルどころか突撃銃を押しつけ、20発の弾を込めた上で、銃口を足に向けさせてやる。

私的全人類にオススメできそうリストにランクイン

15–16. 隷王戦記(1 フルースィーヤの血盟 / 2 カイクバードの裁定)

著: 森山光太郎、購入

ハヤカワがすごい宣伝していた印象があり購入。ザ・王道って感じで久々にこういう本を読みました。三部作予定らしいが、次作で畳まれてしまうのがもったいない…

17. 計算できるもの、計算できないもの ―実践的アプローチによる計算理論入門

著: John MacCormick、購入

個人的に目新しいことはないですが、間違いなく良書で挑戦的な内容。計算理論全般をバランスよくカバーしてるんじゃないかな。最初に渡す一冊になれそうな本。

18–19. クラウド・アトラス (上・下)

著: David Mitchell、購入

「ボーン・クロックス」がとても良かったので著者の別作品に手を出してみた。物語の織り込み方とたたみ方がすごい。映画あるらしいので見るかも。

20. 実力も運のうち 能力主義は正義か?

著: Michael J. Sandel、購入

話題本で、すごく良い本です。ずっとモヤモヤしてたことが淀みなく分析されてる。サンデルの本を手にとったのは大学入学前に読んだJustice以来。

私的全人類にオススメできそうリストにランクイン

21. Planning Algorithms

著: Steven M. LaValle、ラボより

全部は読んでないので加えるか迷ったんですが、読み込んだのも事実なので。途中からどうしても読みづらくて単に辛くなってきたので(相性の問題?)諦めましたが(800pあるからね)。ただ非常に勉強になったのも事実。引用もしてるしね。

22–23. マーダーボット・ダイアリー (上・下)

著: Martha Wells、購入

非常に面白い!賞総なめしてるのも納得です。ひねくれ者の “弊機”の語りが秀逸で、独特の雰囲気感があります。個人的に弊機が保険会社の弊社をケチだとぶつくさ言ってるのが好き。

24–25. 錬金術師の密室 / 錬金術師の消失

著: 紺野 天龍、購入

ミステリです。世界観とキャラが好き。すごいとこで終わっているので続編早く状態になってる。

26. リサーチの技法

著: ブース,ウェイン・C. / コロンブ,グレゴリー・G. / ウィリアムズ,ジョセフ・M. / ビズアップ,ジョセフ / フィッツジェラルド,ウィリアム・T.、購入

タイトルがミスリード。文献調査の印象があり、いわゆる理工系の人たちが想定する研究ではない気もする。が、参考にはな った。

27–31. 三体 (Ⅰ / Ⅱ 黒暗森林 上・下 / 死神永生 上・下)

著: 劉慈欣、購入

超話題本ですね。十日で全作一気読みしたので読後は放心状態でした。時代を作るパワーをもった本で、滅多にお目にかかれないレベルの迫力と壮大感があります。Ⅱのエンドはとても綺麗。Ⅲは著者がやりたいように書いたなという感じで、特に後半ですが、遂にSF始まったぞ?と思ってました。好きな人間はトマス・ウェイドです。

前へ!前へ!なにがあろうと前へ!

32. 逆転世界

著: Christopher Priest、購入

騙りの天才、プリーストの古い作品です。相変わらずマニアックな世界観で、最後の最後に何が起きていたのかが分かるやつ。

33. こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

著: アマル・エル=モフタール / マックス・グラッドストーン、購入

今年ナンバー2。あとがきに書いてあるように「奇妙奇天烈な文学の創造物」で、最初は意味わからんって感じで進みますが、だんだんと文体に慣れてきて気づいたら一気読み。スルメ本ですね。

めっちゃ推したいけど推せる人が限定されるタイプ。

34. 開かせていただき光栄です

著: 皆川 博子、購入

18世紀ロンドンを舞台にしたミステリ。読了感が不思議だった。三部作っぽいけど続編読むか迷う。

35. 評決の代償

著: Graham Moore、購入

スピード感あるリーガル・ミステリで、ところどころ(上質で好みな)皮肉が入る。途中から止まらなくなって一気読みしてしまった。完成度高い。 著者はイミテーション・ゲームの脚本家ですね。

36. 理由

著: 宮部みゆき、区立図書館より

宮部さんの本けっこう読んでる気がするが、代表作読んでなかった。読後、解説の「すごかったでしょ?めちゃくちゃ面白かったですよね。やっぱ、宮部みゆきさんって、もう、最高ですよねーっ。」にめっちゃ吹いた。わかる。

37. エンジニアのためのフィードバック制御入門

著: Philipp K. Janert、購入

勉強したかったので全部読んだが相性が悪かった、普通に教科書読むべき。

38–39. 水使いの森 / 幻影の戦

著: 庵野 ゆき、購入

Amazonでたまたま見かけて面白そうだなと思い読みましたが、存外はまった。今年のダークホース枠。著者、ペンネームで実は二人で書いているらしい。三部目が最近出たようなので楽しみ。

40. アクロイド殺し

著: Agatha Christie、購入

これもクリスティの代表作ですね。『評決の代償』で(推理に足る情報を提示するという意味で)「クリスティが公平だ」と評するシーンがあるんですが、まさにその通り。

41. 失敗の本質―日本軍の組織論的研究

著: 戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎、購入

有名本ですね。ケーススタディも面白いんだが、組織論に対する考察も勉強になる。大東亜戦争、知識的には高校授業で触れたくらいしか知らなかったから見方がだいぶ変わったな。インパール作戦のグダグダ感はヤバいですね…

分かりやすい一文を引いてくると

特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった

私的全人類にオススメできそうリストにランクイン

42. 木曜殺人クラブ

著: Richard Osman、購入

あとがきにあるように喜劇的なミステリで、登場人物各々がいい性格してて好き。途中で犯人候補を十点満点で採点するシーンがあるんだけど、ウイスキー飲むたびに点数が上がっていくのがとても好き。

43. ソラリス

著: Stanisław Lem、購入

古典SF、コンタクトもののの代表作。読後、どこかに放出された感じになる。圧倒的な作品ですね。「欠陥を持った神」のコンセプトが好き。

44. ネットワーク・エフェクト

著: Martha Wells、購入

『マーダーボット・ダイアリー』の続編。ひねくれ者の“弊機”の語り草は健在で、至るところでクスッと笑わせてきます。ストーリーも最初から最後まで面白いです。前作にハマった方はぜひ。

45–46. エラントリス 鎖された都の物語 (上・下)

著: ブランドン サンダースン、購入

今年のナンバー3。長編ファンタジー。タイトルが魅力的ですね。設定が緻密に作り込まれていて、ぐいぐい引き込まれます。登場人物たちのキャラも立っていて好き。

終盤の勢いがとんでもない作品。アニメ化でもしてくれたらいいのに。

47. 隻眼の少女

著: 麻耶 雄嵩、購入

近場の本屋で見かけて面白そうだったので読んだSF。まあまあ。犯人はわかったぞ。

48. はじめて学ぶソフトウェアのテスト技法

著: Lee Copeland、購入

一般的なことが気軽に把握できて良い。人に勧められる。ただもう少し新しめのやつ読んでみたいかも。

49. Algorithms for Optimization

著: Mykel J. Kochenderfer、購入

主に連続最適化を幅広く扱っていて、今後よく活用しそう。擬似コードの代わりにJuliaのサンプルコードを載せていて、かなり読みやすかった。実際に影響を受けていて最近はJulia使ってます。

とにかくイラストがわかりやすくて直感的。レイアウトも綺麗で美しい本です。

50–54. 屍鬼 (1–5)

著: 小野不由美

図書館でたまたま見つけたので、10年ぶりくらいの再読です。ここまで迫力のある物語に出会うことは早々ないでしょう… 文庫本だと宮部さんの解説があるんですね。面白くて笑ってしまった。

55. プロの撮り方 露出を極める 改訂新版

著: ブライアン・ピーターソン、購入

カメラ買ったのでちゃんと勉強したいなと思って読んだ。とても面白かった。アマチュア写真が撮りたいぞ。

56. 同志少女よ、敵を撃て

著: 逢坂 冬馬、購入

話題本ですね。発売前から楽しみにしていて夜な夜な読みふけりました。狙撃手という特殊な立場とスピーディーな展開で最初から最後までグイグイ引き込んできます。人に勧めやすいかも。

57–59. ミストボーン 霧の落し子 (1 灰色の帝国 / 2 赤き血の太陽 / 3 白き海の踊り手)

著: Brandon Sanderson、購入

『エラントリス』が良かったので同著者の別の作品に手を出した。三部作、各三冊の骨太な物語である。盗賊団が国をひっくり返すお話です。終盤にかけてグイッと面白くなる

60–61. ミストクローク (1 遺されし力 / 2 試されし王)

著: Brandon Sanderson、購入

『ミストボーン』の二部目。三冊目まだ読んでいる途中なので感想は控えておくね。

62. ワインは楽しい!

著: オフェリー・ネマン / ヤニス・ヴァルツィコス、購入

今年はワインをよく飲んだ。名前は覚えられないのだけど、とにかくワインが好き。裏のワイン屋にも顔を覚えられてしまった。せっかくなので少し勉強しました。

総括

研究にかなり集中していたので、時間がかかる勉強本や洋書が少なくやや反省。 たくさん手を出しているのは事実なんですが、ちゃんと読み込んでないのでカウントしてないのもあります。代わりといってはなんですが、SF、ミステリ、ファンタジーなど趣味としての読書枠が増えましたね…

雑読派なので勧めたい本あったらぜひ教えて下さいな!

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